院長からのお便り

2015.05.07更新

「犬 乳腺腫瘍」と検索してみたという人、かなりいるんじゃないでしょうか。

そして行きあたるのが

避妊手術と乳腺腫瘍の発生率なる悪魔の如き数字。。


初回発情前に手術      >> 0.5%
初回発情後に手術      >> 8%
2回目の発情後に手術    >> 26%
2.5回以上発情後の手術 >> 予防効果なし
  
ざっくりと、

「2回目の発情までに手術しないと、
 4頭に1頭は乳腺腫瘍ができますよ!」
「だから1歳の間に手術しましょう!」


というわけです。

さてこの数字、果たして本当でしょうか?

昔、ちょっと調べてみたことがあって、

それでわかったのが

それぞれの発生率というか、正しくは割合なんですが、これは本当です。

問題は、この数字(割合)の母集団で、

「乳腺腫瘍を発症した雌犬の中で」

初回発情前に手術して発症した子が0.5%
1回目の発情後に手術して発症した子が8%
2回目の発情後に手術して発症した子が26%
3回目の発情後に手術したり、手術自体をしてない子が残りの65.5%
いた。

というデータなんですね。

なので正しくは、

乳腺腫瘍を発症した子の中で
およそ4頭に1頭は2回目の発情後に手術をした子だった。


というデータなんです。

だいぶ話が違ってきますね。



では、そもそも犬全体の中で

具体的に例えば日本に住む犬全部の中で

乳腺腫瘍はどの程度発生しているのか?

というと


これは別の疫学調査データですが、

年間で10万頭のうち198頭に発生がみられるそうです。

これ、10万を198で割ると、ざっくりとですが

手術するしない全部含めて全体では、

500頭に1頭が乳腺腫瘍になる確率があるという事になります。

で、この198頭に先ほどの「割合」を当てはめてみると・・・

初回発情前に手術    0.5% > 198頭中の0.99頭
1回目の発情後に手術  8%  > 198頭中の15.84頭
2回目の発情後に手術  26% > 198頭中の51.48頭
3回目の発情後に手術
または手術してない犬   65.5%> 198頭中の129.69頭

という事になるので、これをおよその整数になおして整理すると・・・

年間の乳腺腫瘍の発生率は

初回発情前に手術    >  10万頭に約1頭
1回目の発情後に手術  >  10万頭に約16頭  > 6250頭に1頭
2回目の発情後に手術  >  10万頭に約51.5頭 > 約1940頭に1頭
3回目の発情後に手術
または手術していない犬 >  10万頭に約130頭 > 約771頭に1頭

となります。

771頭に1頭を高いとみるか低いとみるか、

これは各々の考え方・捉え方次第だと思いますが・・・

少なくとも4頭に1頭になんかなりません。  

それと、

初回発情前の避妊手術が乳腺腫瘍の発生を限りなくゼロに抑えてくれる

というのはどうやら本当みたいです。



ただし、これら疫学データはかなり古典的なデータと言えるもので

最近のペット事情にそぐわないところもあると思いますので

あくまで避妊手術を考える上での参考データのひとつ

としてお考えください。

           




投稿者: 博多北ハート動物病院

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