治療紹介

2018.09.12更新

こんにちは。

今回は猫の乳腺腫瘍についてです。

また、少し勉強しておきましょう。

 


猫にも乳腺腫瘍があるの?

乳腺腫瘍は乳腺組織が腫瘍化することで起こる病気です。
女の子のニャン子に多く認められる腫瘍で、
生後1年以内に避妊手術をする事で乳腺腫瘍の発生を
85%以上抑える事ができることから、
ワン子と同じく性ホルモンの影響がある腫瘍です。
乳腺腫瘍はニャン子がかかる腫瘍の中で 3 番目に多い腫瘍で、
ワン子と違いおよそ9割が悪性だといわれています。


原因は?

発症の要因として、女性ホルモンやその他のホルモン、
遺伝的体質などの影響があるといわれています。
避妊をしていない中高齢以上の女の子のネコちゃんで、
乳腺腫瘍の発症率が高いことが知られており、
女性ホルモンは発生の要因になっているといわれていますが、
ワンちゃんと違ってネコちゃんの場合避妊手術を行っていても
乳腺腫瘍が発生することがあります。
また、男の子のネコちゃんも、
まれに乳腺腫瘍になることがあるので注意が必要です。


どんな症状?

乳腺組織に「しこり」ができます。
胸や脇の下、下腹部、内股までの乳腺に複数ヶ所
できる場合もあり、
悪性腫瘍の場合は腫瘍の増殖とともに
皮膚が破け出血や壊死を起こしたりします。
また、リンパ節や肺や肝臓などの他の組織に
腫瘍が転移する場合があります。


治療は?

早期発見、早期摘出が重要となります。
良性腫瘍では、早期摘出で経過が良好な場合が多いですが、
悪性腫瘍では、摘出しても再発や他の組織に転移をすることがあり、
経過が悪い場合もあります。
手術で摘出する治療以外に、抗がん剤治療や放射線治療を
行なうこともあり、
またそれらの治療を手術と組み合わせて行なう場合もあります。
当院でも、摘出して病理検査の結果が悪性だった場合、
術後1ヶ月以内に抗がん治療の開始をお勧めしています。

 

予防できるの?

発症には女性ホルモンの影響があるといわれているため、
若いうちに避妊手術をすることが望ましいでしょう。
避妊手術をしても発症することがあるため、
日頃からネコちゃんの体をこまめに触ることを心がけ、
「しこり」がみられた場合は、早めにかかりつけにご相談ください。

 

ここからまた、手術の画像です
乳腺腫瘍猫 1
太っていて判り辛いですが、右側の乳腺にしこりがあります。

 

乳腺腫瘍猫 2
第一乳房から切開しているところです。
ごらんのように、犬と比べて出血量が少ないです。
これは、猫の皮膚の血管が犬に比べてあまり発達していないからですが
そのためこのような広範囲の皮膚切開をする場合には、
術後の血行障害による癒合不全にも気をつけないといけません。

 

乳腺腫瘍猫 3
全部摘出し終わったところです。
やはり、出血が少ないです。

 

乳腺腫瘍猫 4
マットレス縫合を施しつつ皮膚を縫合して終了です。

投稿者: 博多北ハート動物病院

2018.09.08更新

ワン子の乳腺腫瘍は、比較的よくみる腫瘍のひとつで、女の子にとっては最も多い腫瘍のひとつです。

 




乳腺腫瘍ってどんな病気?

乳腺は、
左右の乳頭に沿って存在する乳汁を分泌する分泌組織で、
乳腺腫瘍はこの乳腺組織が腫瘍化することで起こる病気です。
中高齢の女の子のワンちゃんに多く認められる腫瘍です。


何が原因?

発症の要因として、女性ホルモンやその他のホルモン、
遺伝的体質などの影響があるといわれています。
避妊していない中高齢以上の女の子のワンちゃんで、
乳腺腫瘍の発症率が高いことが知られており、
初めての発情の前に避妊手術を行うと乳腺腫瘍になる確率が
非常に低くなるといわれています。
乳腺腫瘍の確率についてはコチラも参考にしてみてください。


どんな症状?

乳腺組織に「しこり」ができます。
胸や脇の下、下腹部、内股までの乳腺に
複数ヶ所できる場合もあり、
ワン子の場合は悪性腫瘍の確率がおよそ50%だと言われています。
悪性腫瘍の場合は腫瘍の増殖とともに皮膚が破け
出血や壊死を起こしたり、リンパ節や肺や肝臓などの
他の組織に転移する場合があります。
腫瘍の大きさが直径2cmを超えると、
肺などの他の臓器への転移リスクが高まると言われています。

 

治療法は?

外科的に腫瘍を手術で摘出します。
早期発見、早期摘出が重要となります。
良性腫瘍では、早期摘出で経過が良好な場合が多いですが、
悪性腫瘍では、摘出しても再発や他の組織に転移をすることがあり、
経過が悪い場合もあります。
手術で摘出する治療以外に、
抗がん剤治療や放射線治療を行なうこともあり、
またそれらの治療を手術と組み合わせて行なう場合もあります。


予防法はあるの?

発症には女性ホルモンの影響があるといわれているため、
若いうちに避妊手術をすることは乳腺腫瘍の予防につながります。
また、日頃からワンちゃんの体をこまめに触ることを心がけ、
「しこり」がみられた場合は、早めにかかりつけにご相談ください。

 

実際の手術の画像です
乳腺腫瘍犬1
この子はごらんの通り、左側の乳腺に巨大な腫瘍ができていました。
その他にも、周辺に複数のしこりを確認したので、
左側乳房全摘出術を施しました。

乳腺腫瘍3
乳房の皮膚にはたくさんの血管が分布していて、そのひとつひとつを止血しながら
乳房を剥離していきます。


乳腺腫瘍犬4
本丸の大きな腫瘍を剥離するところです。
皮膚からの出血が主で、皮下組織からの出血は血管数が限られているため
コントロールしやすく、軽微です。

乳腺腫瘍犬5
左乳房の全摘出が終わったところです。
これからまず支持用のマットレス縫合を施しつつ、
皮膚を寄せながら皮下組織を縫合していきます。


乳腺腫瘍犬6
皮膚縫合の際に、縫合面にテンションがかからないように
力のかかる方向や程度を調整しながら縫合しています。


乳腺腫瘍犬7
最後に皮膚を縫合して終了です。
このあと、全体に圧迫包帯を施して、
さらに縫合面の外側への張力がかからないようにします。
当院では3日間の圧迫包帯の後、問題がなさそうであればマットレス縫合を外して
退院となります。

 

病理検査の結果は、

多中心性複合乳腺腫および高度過形成

という事で、とても大きかったですが良性腫瘍でした。

 

投稿者: 博多北ハート動物病院

2018.09.05更新

こんにちは

今回は腸閉塞のお話です。

また、ちょっとお勉強していきましょう。

 

 


腸閉塞って何?

 


腸閉塞とは、消化管(胃や腸)の内容物が
なんらかの原因で通過できなくなっている状態(閉塞)
をいいます。
閉塞の状態によっては腸の機能を障害し、
命にかかわることもあります。

 

 

 

何が現因?

 


腸閉塞(イレウス)の原因には、異物の誤食や腸重責
(腸管がとなりの腸管の中に入り込んでる状態)、
回虫などの腸内寄生虫の大量寄生、腹腔内の腫瘍、
ヘルニアなどの原因があります。
ワンちゃんでは特にボールやオモチャ、
日常生活品などの誤食が原因となって発生すること
が多いといわれています。
また、稀にですが急性膵炎や急性胃腸炎などで
腹膜炎を起こした場合に、
痛みで腸が収縮してしまう
機能性イレウスという症状になることもあります。
一番ポピュラーなのは、人間のアニサキス症で
アニサキスという小さな寄生虫が一匹でも腸壁に噛み付くと
その痛みで腸が収縮してしまって腸閉塞を起こします。
機能性イレウスの場合はこうした痛みの原因を取り除く事で
治癒します。

 

 

 

症状は?

 


腸の閉塞の状態によって、症状は異なります。
一般的に頻回の嘔吐や食欲不振、腹痛などを起こします。

腸閉塞により腸の血管の血液循環が阻害されている
場合には重症となり、
激しい腹痛やショック状態に陥ることもあります。

 


治療法は?

 


腸閉塞の原因を取り除く治療となります。
多くの場合、手術による外科的処置を行います。

閉塞によって腸管の血管の血行障害が起こり、
腸管の壊死
(腸管の組織が回復できないほどダメージが激しい状態)
を起こしている場合は、その腸管部分を切り取り、
腸管の端々を接合する手術となります。
また、ショックなどを起こしている場合は、
点滴などの処置を行い状態の改善を
図ることが優先されます。
急性膵炎などによる腹膜炎の痛みから起きる
機能性イレウスの場合には
原疾患の膵炎の治療が最優先で、
同時に鎮痛剤を使って痛みを和らげる事で
閉塞状態を解除する事ができます。

 

 

 

予防法はあるの?

 


ワン子の腸閉塞の原因には異物の誤食が多いため、
特に仔犬の時期には身の回りに誤食するような
ものを置かないようにすることが重要です。

また、寄生虫などが原因となることがあるので、
定期的に検便を行いましょう。

上記のような症状がある場合は、
重症になる前に早めに通院、検査を受けてください。
過去に、
庭に玉砂利を敷き詰めたところ早速誤食してしまい
手術で取り出したダックスがいましたが
退院して無事抜糸も終わった直後
わずか1日でまた誤食してしまって
再手術になった子がいました。
2回目の手術では術後は抜糸までお預かりとして
その間に飼い主さんは
庭に敷き詰めた玉砂利を撤去したのですが・・・
退院後庭の隅っこに2~3個残っていた砂利を
わざわざ探し出して飲み込んで、
1ヶ月の間に3回も開腹手術になってしまった
ツワモノがいました。
このように、一度やらかしたワン子は
残念ながら懲りる事がないので、

またやる!

と思って整理整頓を入念にやりましょう。

 

ここから、誤食による腸閉塞の手術の画像です
誤食犬1
これはワン子の誤食で、
異物が小腸に詰まっている状態です。
まだ腸壁や周囲の変色などもなく、
状態としては良好なタイミングでした。
これなら術後の経過は心配ないでしょう。

誤食犬2
小腸を切開して、内容物を取り出すところです。
これでは、なんだかよく判らないですね。

誤食犬3
異物を摘出後、腸壁の縫合も終えたところです。
この後、小腸内に生理食塩水を針で注入して
縫合部から水漏れがない事を確認して閉腹します。

誤食犬4
取り出した異物を切ってみたところ
正体は飼い主さんにも不明でしたが、
なにかゴム製品のなれの果てみたいです。
このように、普通じゃ考えられないものを飲み込むので
そういう悪癖がある仔には注意してもし過ぎる事はありません。

 

 

 

 

投稿者: 博多北ハート動物病院

2018.09.02更新

こんにちは。

今回は胆嚢粘液嚢腫のご紹介です。

まず、かるくお勉強を。

胆嚢粘液嚢腫って何?

肝臓で生成された胆汁は胆嚢に一時貯蔵されます。
食事をとると胆嚢が収縮し、胆汁が十二指腸に放出されて脂肪分を分解します。
胆嚢粘液嚢腫とは、何らかの原因で胆嚢の中にゼリー状の粘液物質が貯留した状態をいいます。
胆汁の分泌を障害するために様々な消化器症状を引き起こし、
状態が進むと、黄疸や胆嚢破裂に伴う腹膜炎などの重篤な合併症を引き起こします。


何が原因?

原因は現在のところはっきりわかっていませんが、
濃縮胆汁や胆泥(胆汁が濃縮や変質により泥状になったもの)、
胆石(胆汁の成分が変質して結石状になったもの)などの刺激が引き金となり、
胆嚢壁での粘液の産生が過剰に起こると考えられています。
高脂血症を持っているワンちゃんに多く見られることが知られており、
遺伝的に脂質代謝異常の多いミニチュア・シュナウザーやシェットランド・シープドッグ
などに多くみられます。

また、加齢に伴う胆嚢壁の構造の変化や胆嚢の運動性の低下も
原因ではないかと考えられています。


どんな症状?

軽度の場合には特に症状を示さず、
健康診断等で偶然発見されるケースも多く見られます。
胆汁の分泌障害が起こると、嘔吐、下痢、腹痛、食欲不振などの
慢性的な消化器症状がみられ、肝障害を併発する場合もあります。

胆汁の流れが完全に遮断されると黄疸が起こり、
重症の場合には胆嚢が破裂し腹膜炎を起こすこともあります。



治療法は?

特に臨床症状を伴わない軽度の場合には、
内科療法と食事療法(低脂肪食など)で管理できる場合もありますが、
徐々に進行してくる可能性もあるため、定期的な検査による経過観察が必要です。
内科治療に反応が悪かったり、進行して臨床症状を伴っていたり、
胆嚢破裂など合併症の発症の危険性があるようなケースでは、
外科的に胆嚢を切除する手術を行います。

進行して状態が悪くなってからの手術はリスクが高く、
手術中や術後の死亡率が高いため、手術を行う時期については、
個々の状態を見ながら十分検討した上で決定する必要があります。



予防法はあるの?

高カロリー・高脂肪の食べ物をなるべく控え、
栄養バランスのとれた食生活を心掛けましょう。

早期発見・早期治療が重要な病気です。高脂血症や胆泥症、胆石症など、
発症の引き金となるのではないかと考えられている疾患を予防し、
早期に発見するため、定期的な健康診断を受けましょう。

 
実際の手術画像です

胆嚢粘液嚢腫1

この子の場合、見てのとおりかなり黄疸が進行していて
(切開して見えている脂肪が黄色い)

実は手術のタイミングとしてはかなり遅くなってしまい、

リスクの高い手術でした。

 

胆嚢粘液嚢腫2

中央に見えている、緑色の物体が胆嚢です。

周辺の赤いお肉のようなものは肝臓です。

胆嚢はこのように、

肝臓の間に肝臓の表面に張り付いた状態

で収まっているので

これから慎重に胆嚢と肝臓を剥離していきます。

その際、ちょっと間違うと大量出血してしまうため

ボールチップ電気メスとガーゼ、綿棒を駆使して慎重に剥離していきます。

 

胆嚢粘液嚢腫3

これは、すでに摘出したところです。
(摘出中の画像を期待した人、ごめんなさい)

慎重に剥離していき、総胆管から胆嚢への分岐部で結札して摘出します。

右手に持っているのが摘出した胆嚢です。

見てのとおり、

きちんと摘出すると胆嚢表面はツルツルな状態で取り出せます。

画像では、摘出後の微出血をガーゼパッキング

という手法で止血しているところです。

当院ではこの後、大網の一部をここに詰め込んで

大網と肝臓が癒着する事で永続的に止血できるようにします。

 

胆嚢粘液嚢腫4

摘出した胆嚢を開けてみると・・・

このようなゼリー状の物質が充満していました。

これが胆嚢の中だけでなく、

総胆管や肝内胆管にも詰まってしまうと

閉塞性黄疸を発症してしまい

重篤な状態に陥ってしまいます。

今回のこの子はまさに閉塞性黄疸に陥り

このままでは助からないというところまで病状が進行してしまい

一か八か、一縷の望みをかけて手術に踏み切りました。

結果、術後も一ヶ月近い入院治療が必要ではありましたが

なんとか助かってくれて、今では元気いっぱいです。

ただ

本来ならそこまで酷くなる前に手術に踏み切るべき病気で

今回の状況での手術で助かったのは

はっきり言って奇跡以外のなにものでもありません。

適切な時期の手術であれば7~10日程度の入院は必要にはなりますが

手術の成功率は格段に違います。

 

また、この病気の厄介なところは

普段よく行われている定期健診としての

血液検査だけでは発見できない事がある

という事。

特に初期段階で、まだ症状を伴っていない場合

血液検査のデータ上では肝臓や胆嚢には全く異常が見られないのに

エコー検査をしてみると胆泥が溜まっていたり

すでに胆嚢粘液嚢腫を発症しているケースもあります。

なので本来なら、定期的な血液検査はもちろんですが

同時に人間ドックのように画像検査なども含めた全身状態の検査も

しておいた方が良いのです。

 

投稿者: 博多北ハート動物病院

2018.02.17更新

よく、ワン子の飼い主さんからご相談されるのがこの、

涙やけです。

この涙やけ、原因は様々。

細菌性やアレルギーなど、眼周囲の炎症が原因だったり、

生まれつきの眼の構造の問題で涙のはけが悪くて絶えず溢れるケースや

フードが合わなくて涙の性質が変化してしまっていたり

中には水分の不足や運動不足が原因で代謝不良を

起こしている事が大元の原因だったりすることもあります。

 

涙やけの改善にはまず、

たっぷりの水分と、十分な運動を心がける事。

それでも改善しない時

例えばあるフードに変える事で涙やけが改善していく事があります。

 

茶々全身pre

この子は茶々といって、

とある事情でうちの居候になってる子です。

なかなかに可愛い、おすまし顔してますが・・・

目元を拡大してみると

 

茶々目元pre

毛色が黒なんでちょっとわかりにくいですかね?

目元にたんまりと目やにがこびりついていて

こげ茶色の涙やけがしっかりと。

 

この子に限らず、病院の居候達はどうしても運動不足になりがちで

この子も、必ずしもベストな飼育環境とは言えません。

涙やけもそのへんに原因の一端がありそうですが

そうすぐに改善できる事でもなく・・・

そこでフードを

アミノペプチドフォーミュラというアレルギー用のフードに変えてみました

このフードで涙やけが治った!

という情報を頂いたので、ちょっと試してみようと。

 

およそ1か月半、これだけを与え続けた結果

茶々目元post

茶色い色素はまだ残るものの

だいぶ改善してます。

目元なんかは、びっしりこびりついてた目やにがなくなって

すっきり!

 

茶々全身post

美人さんになりました ?

 

投稿者: 博多北ハート動物病院

2016.05.26更新

よろしく、お願いします!

投稿者: 博多北ハート動物病院

2016.03.11更新

今回は、どこの動物病院でも最も多く執刀されている不妊手術のご紹介です。

至ってベーシックな手術でもあり、

わざわざとりあげてご紹介している動物病院はあまりないかも知れません。

なので、わが子の手術を希望したものの、果たしてどんな手術なのか

不安に思う人もいらっしゃるかも知れませんね。

ベーシックな手術ではあるものの、複数の術式があり、

細かい部分まで指摘すると千差万別。

あくまで当院での術式について、ご紹介しますので、ご参考まで。



さて、今回は猫の避妊手術です。



麻酔して、手術の用意が整ったところですね。




皮膚を切皮したところですが、赤丸の部分を拡大します



猫の皮膚はとてもしなやかでよく伸びるため

この程度の切皮でも十分に手術が可能です。

もちろん、多少のテクニックと経験は必要です。



腹筋を切開して、まず術者からみて向こう側、左の卵巣を露出させます。

この子はすでに発情が来ていたので卵巣が大きくなり、

子宮角も少し太くなってます。

卵巣の下側で、卵巣堤索や血管と一緒に結紮して切り離します。



左右の卵巣を切り離した後、子宮体部で結紮して

子宮を切除します。

この時子宮を残さないように、できるだけ子宮頸管に近い部分で

結紮を心がけます。



腹筋をアレルギー反応を起こしにくいタイプの吸収糸で縫合します。

さらに、同じく吸収糸で皮内縫合を施して



終了です。

5mm程度の切皮でも猫の皮膚はよく伸びるため

最終的にはおよそ1cmくらいの傷になります。

これくらい小さい傷になると、万が一舐めてもほとんど開くことはありませんし

そもそも傷を気にする子が少ないので

当院ではよほど神経質な子じゃない限りはカラー等お出ししてません。

もちろん、ご希望があればお出しする用意はあります。

投稿者: 博多北ハート動物病院

2014.05.27更新

今回は、他院にて脾臓に腫瘍がみつかり、

当院に転院してきた、

リオちゃんのケースをご紹介します。



健康診断中に、脾臓に腫瘍が見つかったそうで、

手術を勧められたけれど、

諸々の事情で不安があるとの事で当院を受診されました。


早速エコー検査をしてみると・・


  

黄〇の部分が脾臓の腫瘍部分で、直径はおよそ2センチ。

中は血行豊富で、画像だけだと血管腫や血管肉腫の疑いもありそうでした。

心臓にも少し異常があるようで、

もしも血管腫系の腫瘍だとすると、心臓への転移の心配もあるため

よく話し合った上でやはり摘出する事になりました。





これはお腹を開けたところです。

赤いかたまりが脾臓ですが、全体にむくんでいるようです。




腫瘍部分も見えました。

周辺の組織と癒着したりせず、

きれいな状態だったので摘出は問題なさそうです。




超音波を利用したシーリングという手法で脾臓を摘出しているところです。

従来ですと、脾臓にたくさん出入りする動脈や静脈をそれぞれ、

手作業で結紮>離断を繰り返していかなければならず、

手術時間もずいぶんとかかったものですが、

この機械があるとうんと短い時間で手術を終われるので

身体への負担も少なくて済みます。




摘出した脾臓と





病理画像です。

 自己壊死後のリンパ球を貪食するマクロファージが散見されるほか、
 形質細胞の分布が目立つなど
 一種類の細胞ばかりが敷石状に増殖するような、
 リンパ腫を疑わせるような所見は得られない。

                                   (難波病理)

との事で、

悪性の腫瘍ではありませんでしたから、ひと安心です。

先日、無事に抜糸も終えて、今のところ問題もなさそうですが、

今後は術前に発覚した心臓の病気について、

細かくケアしていかないといけません。

投稿者: 博多北ハート動物病院

2014.03.29更新

こんにちは。

今回は、誤食のワン子です。



名前はダニー君、生後8か月のキャバリアの男の子ですが、

はじめ、前日から何度も吐いているとの事で来院されました。

普段から色々と・・・イタズラ好きな子の様で、

何か詰まってるかも知れないため、造影検査をしてみる事になりました。



これは造影前のレントゲン写真です。

はっきりと判るような「異物」は写ってません。





これは、造影剤を飲ませた直後です。

直後なのでまだ、造影剤が食道にも少し残ってます。



このあと、定期的にレントゲンを撮っていって、

造影剤の広がり具合、進み具合をみて

レントゲンには写らない異物を検出したり

腸壁に潰瘍や腫瘍がないかを検査していきます。

そして、3時間以上経っても造影剤はダニー君の胃から出ていかず

これはやはり、何かが胃の出口に詰まっているのだろうと

この時点で試験開腹を行う事になりました。



午後の診療の後、

造影検査を始めてからおよそ7時間ほど経ってましたが

手術に入る前にもう一度、念のためにレントゲンを撮ってみました。



やはり造影剤は胃の中に広がってはいるものの

そこから先へは行ってません。

やはり「何か」が詰まっているようです。




麻酔をかけて、お腹を開いて

腸を調べてみると・・・



場所は十二指腸、

白矢印の間、「腸閉塞部分」と書かれた約20cmに渡って

ヒモ状の「何か」が詰まっているようで

どす赤く、正常な箇所に比べて3倍以上に腫れあがっていました。





場所が十二指腸である事と、触ってみると案外と中が動くので

そのまま胃まで誘導して

腸切開ではなく胃切開で取り出す事にしました。







出てきたものは見てのとおり

シャツ?かなにかの切れ端でした。

これが写真上のように棒状になって詰まってたんですね

布きれとかをいたずらする子はよくいますが

これ、広げると実際には30x30cmくらいありましたから

さすがに通らなかったようです。



今回の手術では、たまたま胃切開でアプローチできましたが

腸を切ると術後72時間は絶食になるのと、

その後もゆっくりと固形食に戻していかなければならず

どうしても入院期間が長引いてしまいますが、

胃切開の場合は、

24時間後には流動食からですが食べさせる事ができるので

比較的早く退院させる事ができます。

この子も、術後の経過はすこぶる順調で

手術の翌々日には退院していきました。


ただね・・・

この「誤食」ですが

お財布に痛い思いをした飼い主さんは懲りても、

実際にお腹を切られて痛かったはずの本人が懲りる事はまずありませんので^^;

一度やらかした子は何度でもやると思いますから

くれぐれもご注意を!



投稿者: 博多北ハート動物病院

2014.02.03更新

今回は再び、唾液腺嚢胞のワン子のフクちゃんです。



前回の吉吉君と同じく、今回もダックスさんなのは、やはり好発犬種だからでしょうか。

開業前に勤めていた病院でこの病気で診ていた子達もダックスさんが多かったですし。




これは横から。

顎の下に大きな大きな、たぷんたぷんの袋がとっても邪魔そうです。



フクちゃん、これまでかかっていた病院で

定期的に中の液を抜いてもらっていたそうですが

溜まる速度が早くなってきたため

手術を希望されて当院にいらっしゃいました。

この病気は基本的には痛みもないため、

邪魔になるほど大きくならなければ様子を見てもいいと思いますし

一度抜くと、再発まで間が空くようなら、

時々穿刺して唾液を抜くという方法で維持するのもいいと思ってます。

ですがフクちゃんの場合、1週間もしたら写真の通り、大量に溜まってしまうので

これはさすがに、何かしら手を打たなければなりません。

初めは、ワン子の唾液腺症のうち内科治療に反応する子がいるので

先に内服でのコントロールを試してみましたが

ちょっと反応している印象はあるものの残念ながらコントロールには至りませんでした。

そこで今回の手術となったワケです。




これは、手術直前ですね。

これだけ大きな袋では、さすがにそのままというわけにもいかないので

まずはこの袋を摘出して、

次いで左右どちらか、今回の症状の原因となる側の

唾液腺(舌下腺と下顎腺)を摘出する事にしました。

まぁ、手術を進めていくうちに

この嚢胞が実は二つに分かれていた事。

左右の唾液腺両方とも腫れていた事。

などが判明して、結局は両方とも摘出する事になりました。



これは唾液腺(舌下腺と下顎腺)を取り出しているところです。

鉗子のもう少し奥まで、きれいに剥離して摘出します。




術後の経過も良く、

すぐは腫れていたお顔も、退院の時にはすっきりして

元気に帰っていきました。



あとは、この病気には残念ながら、ある程度再発の可能性があるため

これからしばらくは要注意です。






        


抜糸にきたフクちゃん。

術後の経過はすこぶる良好で、

ひとまずはもう大丈夫と、治療終了です。

投稿者: 博多北ハート動物病院

前へ

SEARCH

CATEGORY

  • 院長からのお便り
  • STAFF BLOG
  • 治療紹介