治療紹介

2018.09.08更新

ワン子の乳腺腫瘍は、比較的よくみる腫瘍のひとつで、女の子にとっては最も多い腫瘍のひとつです。

 




乳腺腫瘍ってどんな病気?

乳腺は、
左右の乳頭に沿って存在する乳汁を分泌する分泌組織で、
乳腺腫瘍はこの乳腺組織が腫瘍化することで起こる病気です。
中高齢の女の子のワンちゃんに多く認められる腫瘍です。


何が原因?

発症の要因として、女性ホルモンやその他のホルモン、
遺伝的体質などの影響があるといわれています。
避妊していない中高齢以上の女の子のワンちゃんで、
乳腺腫瘍の発症率が高いことが知られており、
初めての発情の前に避妊手術を行うと乳腺腫瘍になる確率が
非常に低くなるといわれています。
乳腺腫瘍の確率についてはコチラも参考にしてみてください。


どんな症状?

乳腺組織に「しこり」ができます。
胸や脇の下、下腹部、内股までの乳腺に
複数ヶ所できる場合もあり、
ワン子の場合は悪性腫瘍の確率がおよそ50%だと言われています。
悪性腫瘍の場合は腫瘍の増殖とともに皮膚が破け
出血や壊死を起こしたり、リンパ節や肺や肝臓などの
他の組織に転移する場合があります。
腫瘍の大きさが直径2cmを超えると、
肺などの他の臓器への転移リスクが高まると言われています。

 

治療法は?

外科的に腫瘍を手術で摘出します。
早期発見、早期摘出が重要となります。
良性腫瘍では、早期摘出で経過が良好な場合が多いですが、
悪性腫瘍では、摘出しても再発や他の組織に転移をすることがあり、
経過が悪い場合もあります。
手術で摘出する治療以外に、
抗がん剤治療や放射線治療を行なうこともあり、
またそれらの治療を手術と組み合わせて行なう場合もあります。


予防法はあるの?

発症には女性ホルモンの影響があるといわれているため、
若いうちに避妊手術をすることは乳腺腫瘍の予防につながります。
また、日頃からワンちゃんの体をこまめに触ることを心がけ、
「しこり」がみられた場合は、早めにかかりつけにご相談ください。

 

実際の手術の画像です
乳腺腫瘍犬1
この子はごらんの通り、左側の乳腺に巨大な腫瘍ができていました。
その他にも、周辺に複数のしこりを確認したので、
左側乳房全摘出術を施しました。

乳腺腫瘍3
乳房の皮膚にはたくさんの血管が分布していて、そのひとつひとつを止血しながら
乳房を剥離していきます。


乳腺腫瘍犬4
本丸の大きな腫瘍を剥離するところです。
皮膚からの出血が主で、皮下組織からの出血は血管数が限られているため
コントロールしやすく、軽微です。

乳腺腫瘍犬5
左乳房の全摘出が終わったところです。
これからまず支持用のマットレス縫合を施しつつ、
皮膚を寄せながら皮下組織を縫合していきます。


乳腺腫瘍犬6
皮膚縫合の際に、縫合面にテンションがかからないように
力のかかる方向や程度を調整しながら縫合しています。


乳腺腫瘍犬7
最後に皮膚を縫合して終了です。
このあと、全体に圧迫包帯を施して、
さらに縫合面の外側への張力がかからないようにします。
当院では3日間の圧迫包帯の後、問題がなさそうであればマットレス縫合を外して
退院となります。

 

病理検査の結果は、

多中心性複合乳腺腫および高度過形成

という事で、とても大きかったですが良性腫瘍でした。

 

投稿者: 博多北ハート動物病院

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