2013.01.31更新



こんにちは。

さて今回は、累計4頭目の陰睾手術を行ったViViちゃんです。

この子を初めて診察した時はまだ、生後3ヶ月ちょっとだったこともあり、

睾丸は両方とも降りてきていませんでしたが、

生後4か月を超えてもどちらも下りなかったため、その時点で両側陰睾と

診断しました。

その後実は、生後10か月目になって右側は降りてきたんですが、

左側は結局降りてきませんでしたので、今回手術を行う事にしました。





手術直前の画像です。

ちょっと判りにくいですが、矢印の先に睾丸があります。

今回は切開は1か所にして、正常な睾丸と陰睾と、同時に取り出すことに

しました。


で、取り出したのがこれですが・・・



前回のサスケちゃんの場合と違って今回は漿膜ごと摘出できたので

見た目が少し違いますが

この漿膜をとってみると、その触感も見た目も寸分違わない印象です。

ですが病理検査では、この子はさすがに1歳未満とあって、

癌化はおろか精巣の細胞構造も正常でした。




初期の精巣癌の場合

実際に摘出したものをじかに触ったり見たりしても

病理検査なしには癌化している睾丸と正常な睾丸の区別がつかないのですから

ましてや通常の診察時に皮膚の外から触っただけでは何も判らないため

「まだ癌化してません。大丈夫ですよ」

とはとても言えません。

また、特にセルトリー細胞腫と呼ばれる精巣の癌が進行した場合、

エストロゲンという性ホルモンを異常に分泌し始め、

そのせいで致死的な貧血が引き起こされる事があります。

そうなってから陰睾の摘出を行ってももう、失われた造血機能は回復しません。

造血機能が壊滅的なダメージを受けてしまっていたらもう

今の獣医療の現状では死を待つだけとなってしまいます。

こういった症状も、見た目で血の気がないとか、はっきりと貧血症状が

出てくるまで判断はできませんから、診断がついた時にはもう手遅れ 

という事もありえます。


なので私は陰睾を見つけたら例外なく、

viviちゃんのようにまだなんともないはずの、

早い段階での手術をお勧めしてます。


2013.01.27更新

1/20追記

先日のサスケちゃんの陰睾手術の続きです。

病理の検査結果が出て、先ほどお母さんにもご報告しましたが、


     弱拡大像:精巣内に曲精細管構造を維持した状態の腫瘍性病変が観察される(矢印


精巣は比較的よく曲精細管構造を維持した腫瘍病変で、内部にはセルトリ細胞
由来とみられる分化度の低い細胞の軽度の増殖がみられるが、細胞異型や
核分裂頻度上昇、観察の範囲での明らかな脈管侵襲像の形成はみられない。
セルトリ細胞以外の細胞の残存がみられないことからも、初期の腫瘍病変と
判断される。
(難波動物病理検査ラボ)


という結果でした。

実はこの子の以前に手術した5歳のダックスでは、同じくセルトリー細胞以外の

細胞が残存していませんでしたが細胞の腫瘍性変化はまだ認められずに

セーフだったんですが・・・

初期のセルトリーノーマという事で、残念ながら全く安心という結果では

ありませんでした。

とはいえまだ、脈管侵襲
(腫瘍細胞が血管などに侵入する現象で、全身転移の危険があるかどうかの判断材料のひとつ)

が認められないとの事ですから、私の経験からも今後悪性経過を辿る可能性は

限りなく低いと思われます。

なので、ほんとうに、ギリギリセーフ?といったところでしょうか。



もともと、セルトリーノーマ(セルトリー細胞腫)のうち、およそ1割にリンパ節転移

が認められるそうなので今後も定期的な身体検査は欠かせませんが

それにしても、もしお母さんの決断がないままいたずらに年月を費やしていたら

どうなっていたことかと、思わず冷や汗をかいてしまいました。

最初にご報告した通り摘出した睾丸は

肉眼上および触診上では癌化してなさそう

だったのですから。

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