2013.08.23更新

こんにちは。

今回もまた、少し前に当院で行った手術の紹介です。

表題のアブセス(膿瘍)とはそのまま、細菌感染を起こした状態を言いますが

アブセスと単に表現する場合にはほとんどが表皮の膿瘍の事を指しています。

大抵は猫同士の喧嘩によるケガでよくみられます。

知ってました?

猫の犬歯には細い溝がありますよね?

あと、爪もなんだか注射針のような鋭く丸い筒状の構造をしています。

これらはどれも、

喧嘩相手に効率よく毒(ばい菌)を注入できる仕組みになっているんですね。

なので猫のひっかき傷で、特にポチっと刺さっただけの傷など

要注意ですよ。

もしかしたら3~4日後にぷっくりと膿んで腫れてくるかも知れません。

さてさて今回は

そんなアブセスの猫さんですが、

クロミちゃんという若い女の子ですが

一度余所の病院で手術したけれど直りきらずに

再び同じところが化膿して破けてしまった子でした。


この時、鼻がズビズビですこしボケボケなお顔のクロミちゃんでした。


術前の、患部の様子です。

黒矢印の白く見える線が前回の手術の痕だと思いますが

複雑な形に縫われたのか、当時の膿瘍の酷さが窺われます。


中のポケットは存外に深く、

白矢印のところまで鉗子が入っていきました。

見た目の皮膚の欠損にくらべて、大きく切開しないといけません。


切開して、ポケットを完全に露出させたところです。

ポケット内部は嚢を形成していたためこのままではきちんと癒着してくれないので

古い結合織の部分を取り除いて、消毒してから縫合します。



終了です。

この子の様に、猫の化膿は時としてとてもしつこく、厄介な事があります。

もっと深く大きかったり、まだ破裂する前でしたら

ドレーンチューブを装着して毎日洗浄していくという方法をとる事もあります。

2013.07.04更新

さてさて。

今回はちょっとお年のニャン子でにゃにゃちゃんと言います。




この子の手術もだいぶ前の手術になります。

はじめ、左肩らへんにしこりがあって様子をみてもらっていましたが

しこりを舐めていたらしく、自壊してしまったため摘出となりました。

その時、同時に首筋にあった小さな、数ミリの吹き出物状のしこりも取る事に。




左肩付近にできていたしこりです。
直径は約1cm。とっても硬いです。




こちらは首筋の「吹き出物」状の腫瘍です(矢印)
ご覧の通り、よ~っく目を凝らしてみても、見た目には腫瘍に見えません。


今回の手術はあくまで、左肩の大きなしこりの摘出で、

首筋の吹き出物はついでに取っちゃおう 

という事になっていました。



左肩の大きなしこり(直径約1cm)の摘出中





首筋の吹き出物の摘出中。


手術は無事に終わり、摘出したこれらのしこりも病理検査に出してみると・・


大きなしこりはケラトアカントーマ(偽癌性軟属腫)といい、

扁平上皮癌と似たような構造をしていますが良性の腫瘍です。

今回は舐めて自壊したので摘出しましたが、

もちろん、再発や転移の心配はありません。


もうひとつ、小さな吹き出物のようなしこりの方は

同じく扁平上皮癌に絡む皮膚病変で

Bowen様表皮内癌という診断が出ました。



いわゆる、Bowen病という皮膚の病気で、

人の場合はここから扁平上皮癌に至る事は稀とされてますが

猫の場合は約17%が扁平上皮癌に進行するという報告もあるのと

多発性で、放置しておくと周辺に増えてしまう可能性もあるため

特に猫では早い段階で摘出が望ましい皮膚疾患のひとつです。

また、摘出した周辺に再発する可能性もあるため、

引き続き経過を監視する必要がありますが、

再発しなければもちろん問題はありませんし、

再発があった場合にも早期に摘出してしまえば皮膚癌に進行する事もありません。

ただし、まんがいち扁平上皮癌に発展してしまうと、非常に厄介なので

そうならないように普段の注意が必要です。

2013.03.15更新

こんにちは。



ワン子と暮らしていると、少し歳を取ってきた頃にふと

身体にイボのような、できものを見つける事があります。

この「イボ」、似たような見た目をしていても正体は様々。

ただの毛包炎のような腫瘍ではない吹き出物のようなものだったり

腫瘍でも毛母腫や組織球腫、基底細胞腫といった良性のものから

ホクロの癌とも言われるメラノーマや肥満細胞腫のような悪性のものまで。

今回の患者さんはライゾウ君。



とっても気の優しいビーグル犬です。

この子の背中には直径2cmくらいの大きなできものがありました。

どうやら、けっこう前からあったようで、

初めて拝見した時すでに切除適応ではありましたが

恐らくは毛母腫とか、そういう類の良性の腫瘍であろうという事から

しばらく様子をみているうちに、

どうも少し大きくなってきているようだと。

ライゾウ君も気になるのか、このできものを噛み始めたため摘出する事にしました。





術前の様子ですが、この時点で直径はおよそ3cm、

さらにこの腫瘍の皮下は赤線の部分で分厚く腫れていて、

本当は背骨に平行になるように切除したかったのですが、

その腫れ方からやむを得ず垂直になるように切開しました。




メスを入れてみると、予想以上に腫瘍の下の腫れは広がっていたようで

腫瘍の下に広がった膿瘍の一部を傷つけてしまって、膿が溢れてきました。



これはすでに切除した後ですが、

取り去った皮膚の下の組織にはなんの異常もありません。




皮膚の下の皮下織と真皮層を縫合しているところです。

こういう、身体の動きなどから皮膚へのテンションが高い場所の縫合ではこの、

真皮をちゃんと縫合できていないと、後々になって傷が開いたりする事があるので

しっかりと、丁寧に縫合していきます。



最後に皮膚を縫合して終わりです。

ライゾウ君の場合、理想的な方向での切開ができなかったため、

抜糸までの期間は念のために長めに設定して、

先日無事に抜糸を済ませました。

因みに病理検査は行っていませんが、腫瘍の正体はやはり毛母腫のようで、

中は大量の膿と、少量の毛や垢が詰まってました。



これだけ大きな腫瘍になるともう、外科的に摘出する以外に方法がないですが

もっと小さな、直径5~6ミリくらいまでの「イボ」なら

期間限定にはなりますが今度、たぶん6月頃に

無麻酔で診察中に処理できる機械が当院にやってきます。

興味のある方は一度ご相談ください。

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