治療紹介

2018.09.05更新

こんにちは

今回は腸閉塞のお話です。

また、ちょっとお勉強していきましょう。

 

 


腸閉塞って何?

 


腸閉塞とは、消化管(胃や腸)の内容物が
なんらかの原因で通過できなくなっている状態(閉塞)
をいいます。
閉塞の状態によっては腸の機能を障害し、
命にかかわることもあります。

 

 

 

何が現因?

 


腸閉塞(イレウス)の原因には、異物の誤食や腸重責
(腸管がとなりの腸管の中に入り込んでる状態)、
回虫などの腸内寄生虫の大量寄生、腹腔内の腫瘍、
ヘルニアなどの原因があります。
ワンちゃんでは特にボールやオモチャ、
日常生活品などの誤食が原因となって発生すること
が多いといわれています。
また、稀にですが急性膵炎や急性胃腸炎などで
腹膜炎を起こした場合に、
痛みで腸が収縮してしまう
機能性イレウスという症状になることもあります。
一番ポピュラーなのは、人間のアニサキス症で
アニサキスという小さな寄生虫が一匹でも腸壁に噛み付くと
その痛みで腸が収縮してしまって腸閉塞を起こします。
機能性イレウスの場合はこうした痛みの原因を取り除く事で
治癒します。

 

 

 

症状は?

 


腸の閉塞の状態によって、症状は異なります。
一般的に頻回の嘔吐や食欲不振、腹痛などを起こします。

腸閉塞により腸の血管の血液循環が阻害されている
場合には重症となり、
激しい腹痛やショック状態に陥ることもあります。

 


治療法は?

 


腸閉塞の原因を取り除く治療となります。
多くの場合、手術による外科的処置を行います。

閉塞によって腸管の血管の血行障害が起こり、
腸管の壊死
(腸管の組織が回復できないほどダメージが激しい状態)
を起こしている場合は、その腸管部分を切り取り、
腸管の端々を接合する手術となります。
また、ショックなどを起こしている場合は、
点滴などの処置を行い状態の改善を
図ることが優先されます。
急性膵炎などによる腹膜炎の痛みから起きる
機能性イレウスの場合には
原疾患の膵炎の治療が最優先で、
同時に鎮痛剤を使って痛みを和らげる事で
閉塞状態を解除する事ができます。

 

 

 

予防法はあるの?

 


ワン子の腸閉塞の原因には異物の誤食が多いため、
特に仔犬の時期には身の回りに誤食するような
ものを置かないようにすることが重要です。

また、寄生虫などが原因となることがあるので、
定期的に検便を行いましょう。

上記のような症状がある場合は、
重症になる前に早めに通院、検査を受けてください。
過去に、
庭に玉砂利を敷き詰めたところ早速誤食してしまい
手術で取り出したダックスがいましたが
退院して無事抜糸も終わった直後
わずか1日でまた誤食してしまって
再手術になった子がいました。
2回目の手術では術後は抜糸までお預かりとして
その間に飼い主さんは
庭に敷き詰めた玉砂利を撤去したのですが・・・
退院後庭の隅っこに2~3個残っていた砂利を
わざわざ探し出して飲み込んで、
1ヶ月の間に3回も開腹手術になってしまった
ツワモノがいました。
このように、一度やらかしたワン子は
残念ながら懲りる事がないので、

またやる!

と思って整理整頓を入念にやりましょう。

 

ここから、誤食による腸閉塞の手術の画像です
誤食犬1
これはワン子の誤食で、
異物が小腸に詰まっている状態です。
まだ腸壁や周囲の変色などもなく、
状態としては良好なタイミングでした。
これなら術後の経過は心配ないでしょう。

誤食犬2
小腸を切開して、内容物を取り出すところです。
これでは、なんだかよく判らないですね。

誤食犬3
異物を摘出後、腸壁の縫合も終えたところです。
この後、小腸内に生理食塩水を針で注入して
縫合部から水漏れがない事を確認して閉腹します。

誤食犬4
取り出した異物を切ってみたところ
正体は飼い主さんにも不明でしたが、
なにかゴム製品のなれの果てみたいです。
このように、普通じゃ考えられないものを飲み込むので
そういう悪癖がある仔には注意してもし過ぎる事はありません。

 

 

 

 

投稿者: 博多北ハート動物病院

2018.09.02更新

こんにちは。

今回は胆嚢粘液嚢腫のご紹介です。

まず、かるくお勉強を。

胆嚢粘液嚢腫って何?

肝臓で生成された胆汁は胆嚢に一時貯蔵されます。
食事をとると胆嚢が収縮し、胆汁が十二指腸に放出されて脂肪分を分解します。
胆嚢粘液嚢腫とは、何らかの原因で胆嚢の中にゼリー状の粘液物質が貯留した状態をいいます。
胆汁の分泌を障害するために様々な消化器症状を引き起こし、
状態が進むと、黄疸や胆嚢破裂に伴う腹膜炎などの重篤な合併症を引き起こします。


何が原因?

原因は現在のところはっきりわかっていませんが、
濃縮胆汁や胆泥(胆汁が濃縮や変質により泥状になったもの)、
胆石(胆汁の成分が変質して結石状になったもの)などの刺激が引き金となり、
胆嚢壁での粘液の産生が過剰に起こると考えられています。
高脂血症を持っているワンちゃんに多く見られることが知られており、
遺伝的に脂質代謝異常の多いミニチュア・シュナウザーやシェットランド・シープドッグ
などに多くみられます。

また、加齢に伴う胆嚢壁の構造の変化や胆嚢の運動性の低下も
原因ではないかと考えられています。


どんな症状?

軽度の場合には特に症状を示さず、
健康診断等で偶然発見されるケースも多く見られます。
胆汁の分泌障害が起こると、嘔吐、下痢、腹痛、食欲不振などの
慢性的な消化器症状がみられ、肝障害を併発する場合もあります。

胆汁の流れが完全に遮断されると黄疸が起こり、
重症の場合には胆嚢が破裂し腹膜炎を起こすこともあります。



治療法は?

特に臨床症状を伴わない軽度の場合には、
内科療法と食事療法(低脂肪食など)で管理できる場合もありますが、
徐々に進行してくる可能性もあるため、定期的な検査による経過観察が必要です。
内科治療に反応が悪かったり、進行して臨床症状を伴っていたり、
胆嚢破裂など合併症の発症の危険性があるようなケースでは、
外科的に胆嚢を切除する手術を行います。

進行して状態が悪くなってからの手術はリスクが高く、
手術中や術後の死亡率が高いため、手術を行う時期については、
個々の状態を見ながら十分検討した上で決定する必要があります。



予防法はあるの?

高カロリー・高脂肪の食べ物をなるべく控え、
栄養バランスのとれた食生活を心掛けましょう。

早期発見・早期治療が重要な病気です。高脂血症や胆泥症、胆石症など、
発症の引き金となるのではないかと考えられている疾患を予防し、
早期に発見するため、定期的な健康診断を受けましょう。

 
実際の手術画像です

胆嚢粘液嚢腫1

この子の場合、見てのとおりかなり黄疸が進行していて
(切開して見えている脂肪が黄色い)

実は手術のタイミングとしてはかなり遅くなってしまい、

リスクの高い手術でした。

 

胆嚢粘液嚢腫2

中央に見えている、緑色の物体が胆嚢です。

周辺の赤いお肉のようなものは肝臓です。

胆嚢はこのように、

肝臓の間に肝臓の表面に張り付いた状態

で収まっているので

これから慎重に胆嚢と肝臓を剥離していきます。

その際、ちょっと間違うと大量出血してしまうため

ボールチップ電気メスとガーゼ、綿棒を駆使して慎重に剥離していきます。

 

胆嚢粘液嚢腫3

これは、すでに摘出したところです。
(摘出中の画像を期待した人、ごめんなさい)

慎重に剥離していき、総胆管から胆嚢への分岐部で結札して摘出します。

右手に持っているのが摘出した胆嚢です。

見てのとおり、

きちんと摘出すると胆嚢表面はツルツルな状態で取り出せます。

画像では、摘出後の微出血をガーゼパッキング

という手法で止血しているところです。

当院ではこの後、大網の一部をここに詰め込んで

大網と肝臓が癒着する事で永続的に止血できるようにします。

 

胆嚢粘液嚢腫4

摘出した胆嚢を開けてみると・・・

このようなゼリー状の物質が充満していました。

これが胆嚢の中だけでなく、

総胆管や肝内胆管にも詰まってしまうと

閉塞性黄疸を発症してしまい

重篤な状態に陥ってしまいます。

今回のこの子はまさに閉塞性黄疸に陥り

このままでは助からないというところまで病状が進行してしまい

一か八か、一縷の望みをかけて手術に踏み切りました。

結果、術後も一ヶ月近い入院治療が必要ではありましたが

なんとか助かってくれて、今では元気いっぱいです。

ただ

本来ならそこまで酷くなる前に手術に踏み切るべき病気で

今回の状況での手術で助かったのは

はっきり言って奇跡以外のなにものでもありません。

適切な時期の手術であれば7~10日程度の入院は必要にはなりますが

手術の成功率は格段に違います。

 

また、この病気の厄介なところは

普段よく行われている定期健診としての

血液検査だけでは発見できない事がある

という事。

特に初期段階で、まだ症状を伴っていない場合

血液検査のデータ上では肝臓や胆嚢には全く異常が見られないのに

エコー検査をしてみると胆泥が溜まっていたり

すでに胆嚢粘液嚢腫を発症しているケースもあります。

なので本来なら、定期的な血液検査はもちろんですが

同時に人間ドックのように画像検査なども含めた全身状態の検査も

しておいた方が良いのです。

 

投稿者: 博多北ハート動物病院

SEARCH

ARCHIVE

CATEGORY

  • 院長からのお便り
  • STAFF BLOG
  • 治療紹介