治療紹介

2018.09.12更新

こんにちは。

今回は猫の乳腺腫瘍についてです。

また、少し勉強しておきましょう。

 


猫にも乳腺腫瘍があるの?

乳腺腫瘍は乳腺組織が腫瘍化することで起こる病気です。
女の子のニャン子に多く認められる腫瘍で、
生後1年以内に避妊手術をする事で乳腺腫瘍の発生を
85%以上抑える事ができることから、
ワン子と同じく性ホルモンの影響がある腫瘍です。
乳腺腫瘍はニャン子がかかる腫瘍の中で 3 番目に多い腫瘍で、
ワン子と違いおよそ9割が悪性だといわれています。


原因は?

発症の要因として、女性ホルモンやその他のホルモン、
遺伝的体質などの影響があるといわれています。
避妊をしていない中高齢以上の女の子のネコちゃんで、
乳腺腫瘍の発症率が高いことが知られており、
女性ホルモンは発生の要因になっているといわれていますが、
ワンちゃんと違ってネコちゃんの場合避妊手術を行っていても
乳腺腫瘍が発生することがあります。
また、男の子のネコちゃんも、
まれに乳腺腫瘍になることがあるので注意が必要です。


どんな症状?

乳腺組織に「しこり」ができます。
胸や脇の下、下腹部、内股までの乳腺に複数ヶ所
できる場合もあり、
悪性腫瘍の場合は腫瘍の増殖とともに
皮膚が破け出血や壊死を起こしたりします。
また、リンパ節や肺や肝臓などの他の組織に
腫瘍が転移する場合があります。


治療は?

早期発見、早期摘出が重要となります。
良性腫瘍では、早期摘出で経過が良好な場合が多いですが、
悪性腫瘍では、摘出しても再発や他の組織に転移をすることがあり、
経過が悪い場合もあります。
手術で摘出する治療以外に、抗がん剤治療や放射線治療を
行なうこともあり、
またそれらの治療を手術と組み合わせて行なう場合もあります。
当院でも、摘出して病理検査の結果が悪性だった場合、
術後1ヶ月以内に抗がん治療の開始をお勧めしています。

 

予防できるの?

発症には女性ホルモンの影響があるといわれているため、
若いうちに避妊手術をすることが望ましいでしょう。
避妊手術をしても発症することがあるため、
日頃からネコちゃんの体をこまめに触ることを心がけ、
「しこり」がみられた場合は、早めにかかりつけにご相談ください。

 

ここからまた、手術の画像です
乳腺腫瘍猫 1
太っていて判り辛いですが、右側の乳腺にしこりがあります。

 

乳腺腫瘍猫 2
第一乳房から切開しているところです。
ごらんのように、犬と比べて出血量が少ないです。
これは、猫の皮膚の血管が犬に比べてあまり発達していないからですが
そのためこのような広範囲の皮膚切開をする場合には、
術後の血行障害による癒合不全にも気をつけないといけません。

 

乳腺腫瘍猫 3
全部摘出し終わったところです。
やはり、出血が少ないです。

 

乳腺腫瘍猫 4
マットレス縫合を施しつつ皮膚を縫合して終了です。

投稿者: 博多北ハート動物病院

2018.09.08更新

ワン子の乳腺腫瘍は、比較的よくみる腫瘍のひとつで、女の子にとっては最も多い腫瘍のひとつです。

 




乳腺腫瘍ってどんな病気?

乳腺は、
左右の乳頭に沿って存在する乳汁を分泌する分泌組織で、
乳腺腫瘍はこの乳腺組織が腫瘍化することで起こる病気です。
中高齢の女の子のワンちゃんに多く認められる腫瘍です。


何が原因?

発症の要因として、女性ホルモンやその他のホルモン、
遺伝的体質などの影響があるといわれています。
避妊していない中高齢以上の女の子のワンちゃんで、
乳腺腫瘍の発症率が高いことが知られており、
初めての発情の前に避妊手術を行うと乳腺腫瘍になる確率が
非常に低くなるといわれています。
乳腺腫瘍の確率についてはコチラも参考にしてみてください。


どんな症状?

乳腺組織に「しこり」ができます。
胸や脇の下、下腹部、内股までの乳腺に
複数ヶ所できる場合もあり、
ワン子の場合は悪性腫瘍の確率がおよそ50%だと言われています。
悪性腫瘍の場合は腫瘍の増殖とともに皮膚が破け
出血や壊死を起こしたり、リンパ節や肺や肝臓などの
他の組織に転移する場合があります。
腫瘍の大きさが直径2cmを超えると、
肺などの他の臓器への転移リスクが高まると言われています。

 

治療法は?

外科的に腫瘍を手術で摘出します。
早期発見、早期摘出が重要となります。
良性腫瘍では、早期摘出で経過が良好な場合が多いですが、
悪性腫瘍では、摘出しても再発や他の組織に転移をすることがあり、
経過が悪い場合もあります。
手術で摘出する治療以外に、
抗がん剤治療や放射線治療を行なうこともあり、
またそれらの治療を手術と組み合わせて行なう場合もあります。


予防法はあるの?

発症には女性ホルモンの影響があるといわれているため、
若いうちに避妊手術をすることは乳腺腫瘍の予防につながります。
また、日頃からワンちゃんの体をこまめに触ることを心がけ、
「しこり」がみられた場合は、早めにかかりつけにご相談ください。

 

実際の手術の画像です
乳腺腫瘍犬1
この子はごらんの通り、左側の乳腺に巨大な腫瘍ができていました。
その他にも、周辺に複数のしこりを確認したので、
左側乳房全摘出術を施しました。

乳腺腫瘍3
乳房の皮膚にはたくさんの血管が分布していて、そのひとつひとつを止血しながら
乳房を剥離していきます。


乳腺腫瘍犬4
本丸の大きな腫瘍を剥離するところです。
皮膚からの出血が主で、皮下組織からの出血は血管数が限られているため
コントロールしやすく、軽微です。

乳腺腫瘍犬5
左乳房の全摘出が終わったところです。
これからまず支持用のマットレス縫合を施しつつ、
皮膚を寄せながら皮下組織を縫合していきます。


乳腺腫瘍犬6
皮膚縫合の際に、縫合面にテンションがかからないように
力のかかる方向や程度を調整しながら縫合しています。


乳腺腫瘍犬7
最後に皮膚を縫合して終了です。
このあと、全体に圧迫包帯を施して、
さらに縫合面の外側への張力がかからないようにします。
当院では3日間の圧迫包帯の後、問題がなさそうであればマットレス縫合を外して
退院となります。

 

病理検査の結果は、

多中心性複合乳腺腫および高度過形成

という事で、とても大きかったですが良性腫瘍でした。

 

投稿者: 博多北ハート動物病院

2018.09.05更新

こんにちは

今回は腸閉塞のお話です。

また、ちょっとお勉強していきましょう。

 

 


腸閉塞って何?

 


腸閉塞とは、消化管(胃や腸)の内容物が
なんらかの原因で通過できなくなっている状態(閉塞)
をいいます。
閉塞の状態によっては腸の機能を障害し、
命にかかわることもあります。

 

 

 

何が現因?

 


腸閉塞(イレウス)の原因には、異物の誤食や腸重責
(腸管がとなりの腸管の中に入り込んでる状態)、
回虫などの腸内寄生虫の大量寄生、腹腔内の腫瘍、
ヘルニアなどの原因があります。
ワンちゃんでは特にボールやオモチャ、
日常生活品などの誤食が原因となって発生すること
が多いといわれています。
また、稀にですが急性膵炎や急性胃腸炎などで
腹膜炎を起こした場合に、
痛みで腸が収縮してしまう
機能性イレウスという症状になることもあります。
一番ポピュラーなのは、人間のアニサキス症で
アニサキスという小さな寄生虫が一匹でも腸壁に噛み付くと
その痛みで腸が収縮してしまって腸閉塞を起こします。
機能性イレウスの場合はこうした痛みの原因を取り除く事で
治癒します。

 

 

 

症状は?

 


腸の閉塞の状態によって、症状は異なります。
一般的に頻回の嘔吐や食欲不振、腹痛などを起こします。

腸閉塞により腸の血管の血液循環が阻害されている
場合には重症となり、
激しい腹痛やショック状態に陥ることもあります。

 


治療法は?

 


腸閉塞の原因を取り除く治療となります。
多くの場合、手術による外科的処置を行います。

閉塞によって腸管の血管の血行障害が起こり、
腸管の壊死
(腸管の組織が回復できないほどダメージが激しい状態)
を起こしている場合は、その腸管部分を切り取り、
腸管の端々を接合する手術となります。
また、ショックなどを起こしている場合は、
点滴などの処置を行い状態の改善を
図ることが優先されます。
急性膵炎などによる腹膜炎の痛みから起きる
機能性イレウスの場合には
原疾患の膵炎の治療が最優先で、
同時に鎮痛剤を使って痛みを和らげる事で
閉塞状態を解除する事ができます。

 

 

 

予防法はあるの?

 


ワン子の腸閉塞の原因には異物の誤食が多いため、
特に仔犬の時期には身の回りに誤食するような
ものを置かないようにすることが重要です。

また、寄生虫などが原因となることがあるので、
定期的に検便を行いましょう。

上記のような症状がある場合は、
重症になる前に早めに通院、検査を受けてください。
過去に、
庭に玉砂利を敷き詰めたところ早速誤食してしまい
手術で取り出したダックスがいましたが
退院して無事抜糸も終わった直後
わずか1日でまた誤食してしまって
再手術になった子がいました。
2回目の手術では術後は抜糸までお預かりとして
その間に飼い主さんは
庭に敷き詰めた玉砂利を撤去したのですが・・・
退院後庭の隅っこに2~3個残っていた砂利を
わざわざ探し出して飲み込んで、
1ヶ月の間に3回も開腹手術になってしまった
ツワモノがいました。
このように、一度やらかしたワン子は
残念ながら懲りる事がないので、

またやる!

と思って整理整頓を入念にやりましょう。

 

ここから、誤食による腸閉塞の手術の画像です
誤食犬1
これはワン子の誤食で、
異物が小腸に詰まっている状態です。
まだ腸壁や周囲の変色などもなく、
状態としては良好なタイミングでした。
これなら術後の経過は心配ないでしょう。

誤食犬2
小腸を切開して、内容物を取り出すところです。
これでは、なんだかよく判らないですね。

誤食犬3
異物を摘出後、腸壁の縫合も終えたところです。
この後、小腸内に生理食塩水を針で注入して
縫合部から水漏れがない事を確認して閉腹します。

誤食犬4
取り出した異物を切ってみたところ
正体は飼い主さんにも不明でしたが、
なにかゴム製品のなれの果てみたいです。
このように、普通じゃ考えられないものを飲み込むので
そういう悪癖がある仔には注意してもし過ぎる事はありません。

 

 

 

 

投稿者: 博多北ハート動物病院

2018.09.02更新

こんにちは。

今回は胆嚢粘液嚢腫のご紹介です。

まず、かるくお勉強を。

胆嚢粘液嚢腫って何?

肝臓で生成された胆汁は胆嚢に一時貯蔵されます。
食事をとると胆嚢が収縮し、胆汁が十二指腸に放出されて脂肪分を分解します。
胆嚢粘液嚢腫とは、何らかの原因で胆嚢の中にゼリー状の粘液物質が貯留した状態をいいます。
胆汁の分泌を障害するために様々な消化器症状を引き起こし、
状態が進むと、黄疸や胆嚢破裂に伴う腹膜炎などの重篤な合併症を引き起こします。


何が原因?

原因は現在のところはっきりわかっていませんが、
濃縮胆汁や胆泥(胆汁が濃縮や変質により泥状になったもの)、
胆石(胆汁の成分が変質して結石状になったもの)などの刺激が引き金となり、
胆嚢壁での粘液の産生が過剰に起こると考えられています。
高脂血症を持っているワンちゃんに多く見られることが知られており、
遺伝的に脂質代謝異常の多いミニチュア・シュナウザーやシェットランド・シープドッグ
などに多くみられます。

また、加齢に伴う胆嚢壁の構造の変化や胆嚢の運動性の低下も
原因ではないかと考えられています。


どんな症状?

軽度の場合には特に症状を示さず、
健康診断等で偶然発見されるケースも多く見られます。
胆汁の分泌障害が起こると、嘔吐、下痢、腹痛、食欲不振などの
慢性的な消化器症状がみられ、肝障害を併発する場合もあります。

胆汁の流れが完全に遮断されると黄疸が起こり、
重症の場合には胆嚢が破裂し腹膜炎を起こすこともあります。



治療法は?

特に臨床症状を伴わない軽度の場合には、
内科療法と食事療法(低脂肪食など)で管理できる場合もありますが、
徐々に進行してくる可能性もあるため、定期的な検査による経過観察が必要です。
内科治療に反応が悪かったり、進行して臨床症状を伴っていたり、
胆嚢破裂など合併症の発症の危険性があるようなケースでは、
外科的に胆嚢を切除する手術を行います。

進行して状態が悪くなってからの手術はリスクが高く、
手術中や術後の死亡率が高いため、手術を行う時期については、
個々の状態を見ながら十分検討した上で決定する必要があります。



予防法はあるの?

高カロリー・高脂肪の食べ物をなるべく控え、
栄養バランスのとれた食生活を心掛けましょう。

早期発見・早期治療が重要な病気です。高脂血症や胆泥症、胆石症など、
発症の引き金となるのではないかと考えられている疾患を予防し、
早期に発見するため、定期的な健康診断を受けましょう。

 
実際の手術画像です

胆嚢粘液嚢腫1

この子の場合、見てのとおりかなり黄疸が進行していて
(切開して見えている脂肪が黄色い)

実は手術のタイミングとしてはかなり遅くなってしまい、

リスクの高い手術でした。

 

胆嚢粘液嚢腫2

中央に見えている、緑色の物体が胆嚢です。

周辺の赤いお肉のようなものは肝臓です。

胆嚢はこのように、

肝臓の間に肝臓の表面に張り付いた状態

で収まっているので

これから慎重に胆嚢と肝臓を剥離していきます。

その際、ちょっと間違うと大量出血してしまうため

ボールチップ電気メスとガーゼ、綿棒を駆使して慎重に剥離していきます。

 

胆嚢粘液嚢腫3

これは、すでに摘出したところです。
(摘出中の画像を期待した人、ごめんなさい)

慎重に剥離していき、総胆管から胆嚢への分岐部で結札して摘出します。

右手に持っているのが摘出した胆嚢です。

見てのとおり、

きちんと摘出すると胆嚢表面はツルツルな状態で取り出せます。

画像では、摘出後の微出血をガーゼパッキング

という手法で止血しているところです。

当院ではこの後、大網の一部をここに詰め込んで

大網と肝臓が癒着する事で永続的に止血できるようにします。

 

胆嚢粘液嚢腫4

摘出した胆嚢を開けてみると・・・

このようなゼリー状の物質が充満していました。

これが胆嚢の中だけでなく、

総胆管や肝内胆管にも詰まってしまうと

閉塞性黄疸を発症してしまい

重篤な状態に陥ってしまいます。

今回のこの子はまさに閉塞性黄疸に陥り

このままでは助からないというところまで病状が進行してしまい

一か八か、一縷の望みをかけて手術に踏み切りました。

結果、術後も一ヶ月近い入院治療が必要ではありましたが

なんとか助かってくれて、今では元気いっぱいです。

ただ

本来ならそこまで酷くなる前に手術に踏み切るべき病気で

今回の状況での手術で助かったのは

はっきり言って奇跡以外のなにものでもありません。

適切な時期の手術であれば7~10日程度の入院は必要にはなりますが

手術の成功率は格段に違います。

 

また、この病気の厄介なところは

普段よく行われている定期健診としての

血液検査だけでは発見できない事がある

という事。

特に初期段階で、まだ症状を伴っていない場合

血液検査のデータ上では肝臓や胆嚢には全く異常が見られないのに

エコー検査をしてみると胆泥が溜まっていたり

すでに胆嚢粘液嚢腫を発症しているケースもあります。

なので本来なら、定期的な血液検査はもちろんですが

同時に人間ドックのように画像検査なども含めた全身状態の検査も

しておいた方が良いのです。

 

投稿者: 博多北ハート動物病院

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